耳のない青年、科学者への道を切り開く
ファム・ドゥック・チン(Phạm Đức Chinh)さんは生まれつき耳介と外耳道がなく、耳が聞こえにくく言葉の発達も遅れたが、大学を優秀な成績で卒業し、化学者になる決意を固めている。
午前7時、ベトナム北部の旧タイビン(Thái Bình)省(現フンイエン省)出身のチンさん(26)は、すでにハノイ工科大学(Đại học Bách khoa Hà Nội)の天然化合物応用研究開発研究所の実験室にいる。彼の普段の一日は、実験室で機器の稼働状況を確認し、同時に学生の卒業研究や果汁の濃縮実験を指導することから始まる。
頭蓋顔面の変形があり、頬骨がなく、口蓋裂で、耳介も外耳道もない青年を見て、彼が優秀な成績で卒業し、大学の上位20人に入り、現在は研究所で研究助手を務めているとは、ほとんどの人が想像しないだろう。チンさんの仕事は多くの人が憧れるものだが、そこに至る道のりは決して「バラ色」ではなかった。

ファム・ドゥック・チンさんは、自宅から大学までわずか1kmだが、毎日自転車で通っている。(写真:Thùy An)
チンさんは幼い頃から先天性の障害を抱えている。耳介と外耳道がないため、音を聞き取るのが非常に難しい。話す練習を始めたのは3歳になってからだった。7歳で小学1年生になると、チンさんは周囲との違いをはっきりと感じるようになった。
「誰とも違う外見で、顔の構造も不完全だったので、学校に通うためには適応の仕方を学び、努力するしかなかった」と彼は話す。中学2年生(8年生)で化学に出会い、興味を持った。基本的な実験や化学反応について夢中で調べ、「これが自分の未来だ」と思った。それ以来、タイビン出身の青年は学校に通う喜びを見いだし、成績も次第に向上した。平均的な生徒から優秀な生徒へと伸び、化学の総合評価は常に10点満点中9点を上回った。
「みんな僕は学校に通えないと思っていたし、『障害があるから先生がひいきしている』と言う人までいた。侮辱の言葉はあまりに多く、一日では語り尽くせない」とチンさんは言う。
ある時、先生たちがハノイ工科大学を紹介するのを偶然耳にしたチンさんは、同大学の化学工学部に進むという夢を追うため、自然科学系の受験科目群で受験することを決めた。
進む道を定めたチンさんは、一層努力し、自分に厳しくなった。さらに幸運なことに、両親の励ましが前へ進む原動力となった。「チンは一人っ子で、あらゆる面で不利な立場にありましたが、私たちは一度も息子を見放そうと思ったことはありません」と母親のヴー・ティ・オアン(Vũ Thị Oanh)さんは話す。そのおかげで、チンさんは人生の中で孤独を感じたことがない。
両親のほかに、チンさんには親友のドアン・チョン・クアン(Đoàn Trọng Quang)さん(25)がいる。クアンさんは幼稚園の頃からチンさんと一緒に学校に通ってきた。雨や風の強い日には、チンさんを迎えに行き、乗せて登校した。授業中、チンさんが聞き取れないと先生の言葉を繰り返して伝えたため、二人は「共に高め合う二人」と呼ばれた。クアンさんは自らを忠実な「用心棒」と称し、チンさんがからかわれるたびにかばってきた。
「みんな僕がチンを助けていると思っているけれど、実際は逆です。チンのおかげで、困難に向き合って乗り越え、毎日をより有意義に生きる方法を学びました」とクアンさんは話す。

大学で8時間、自宅で2時間、チンさんは時間を惜しんで本や科学文献、特許を読み、適切な応用方法を探っている。(写真:Thùy An)
2012年、チンさんは25.5点(化学は9点)でハノイ工科大学に合格した。実家を離れて学ぶことは両親の負担を増やすと分かっていたが、身長1.5メートルの青年は新しい環境で自分を試したいと考えた。自習に加え、友人の支えや教員の助けもあり、教員は聞き取れなかった部分を彼の机まで来て説明し直してくれた。
「ここでは歓迎されました。障害のある人と接することを誰も差別しなかったからです。そのおかげで、それほど時間をかけずに新しい生活に慣れることができました」とチンさんは語る。
2017年、彼はGPA3.2の優秀な成績で卒業し、大学の上位20人に入った。特に3年次の第1学期には、GPA3.9/4でA級奨学金を受けた2人のうちの1人となった。5年間の在学中、チンさんは晴れの日も雨の日も一日も休まず自転車で通学した。これまでに科学研究論文を3本執筆し、そのうち1本は国際誌に掲載された。今後も研究を続け、自身の能力と専攻分野を発展させていくつもりだという。
2年後、彼は大学院修士課程に戻ると同時に、天然化合物の応用研究開発の研究助手として働き始めた。チンさんによると、研究の仕事は非常に忙しく、多くの時間を費やさなければならない。それでも科学研究は、生活の悩みや苦労をすべて忘れさせてくれる。彼にとって科学者の喜びとは興味深い発見をすることであり、だからこそ実験に没頭している。

実験室で作業するチンさん。(写真:Thùy An)
余暇には、知識を深めるために読書を楽しむ。研究書を枕元に置き、「読みたくなったら手を伸ばして読む」という。自らを楽観的だと語るチンさんは、人と違って生まれたことを嘆いたことは一度もない。常に環境に適応し、自分自身の力で前に進むよう心がけている。
「障害を乗り越えた人と呼ばれたくはありません。普通の人でありたいのです」とチンさんは語った。

