ベトナムの科学者が開発した3Dコンクリートプリンティング技術
3Dコンクリートプリンティングは、コンクリートパネルを自動的に印刷することで建築物を建設できる、急速に発展している新しい技術だ。しかし、この技術にとっての大きな障壁は、3Dプリンティング用の新しい材料の開発である。
従来の躯体工事と比べて工期が約80%短縮され、コストが20%削減されるほか、複雑で芸術的なデザインの建物を施工でき、建設廃棄物も減らせる――。これらが、ベトナムの科学者たちが確立した3Dプリンティング技術の強みだ。
3Dプリンティングで家を建てる
建設分野における3Dコンクリートプリンティングとは、コンピューター制御のもとで材料の層を積み重ねて成形し、三次元の物体(建築部材)を造り出すプロセスで、あらかじめCAD(Computer-Aided Design)ソフトウェアで設計された形状を再現する。3Dプリンティングによる成形の特長は、型枠を使わずに、ほぼあらゆる形状の物体を短時間で造れることにある。

ホーチミン市で施工された、美しい造形のコンクリート住宅。
3Dコンクリートプリンティング技術の最大の障壁は、3Dプリンティング用の新材料の開発である。そこで、ベトナム国家大学ホーチミン市校に属するホーチミン市工科大学(Trường Đại học Bách khoa)の研究チームは、科学技術課題「建設工事向け3Dプリントコンクリート技術の研究」を実施し、新しい3Dプリント用コンクリート材料を住宅の施工に応用することを目指した。
課題責任者のチャン・ヴァン・ミエン(Trần Văn Miền)准教授によると、研究チームは2つの分野での応用を目指した3Dプリント用コンクリート材料の開発を目標とした。すなわち、一般建築物の壁の印刷と、建物の装飾的なファサードの造形である。
そのため、チームはPC50セメント、F種フライアッシュ、シリカフューム(SF)、ポリプロピレン(PP)繊維、砂、水、増粘剤(VMA)、高性能減水剤からなる原料を用いた3Dプリント用コンクリート配合の製造に注力した。
ミエン准教授によれば、3Dプリント用コンクリートの原料は細骨材(最大骨材粒径は一般に5mm以下)と結合材の含有量の多さが特徴で、そのため初期段階(部材の印刷後1~3日)における収縮速度と、収縮によって生じる引張応力が、従来の普通コンクリートに比べて著しく大きい。
このため、ほとんどの3Dプリントコンクリートでは、若材齢の段階で部材にひび割れが生じる可能性がある。3Dプリントコンクリートが良好な押し出し性と積層性を持つためには、材料分離を起こさない範囲で粘度をできるだけ低くし、かつ高い静的降伏応力を持つ必要がある。
実験の結果、骨材結合材比(A/B)や水結合材比(W/B)を変えて3Dプリントコンクリートのレオロジーを調整する方法に加え、高性能減水剤と増粘剤(VMA)の添加量を変える方法もあることが分かった。高性能減水剤の添加量を増やすと、塑性粘度、静的降伏応力、動的降伏応力といったコンクリート配合のレオロジー特性値はいずれも低下する。

3Dプリント用コンクリートの原料は細骨材が特徴だ。
複雑な形状の壁を造形
ミエン准教授によると、コンクリート配合の凝結が遅すぎると施工工程や印刷構造体の安定性に影響するため、凝結時間を短縮する必要がある。凝結時間が12時間以内であれば、施工作業に適し、印刷中および印刷終了後の構造体の安定性も確保できる。
2層のコンクリート間の付着強度は、3Dプリントコンクリート材料の圧縮強度に依存し、これに比例する。成功したすべての配合で、層間付着強度は1MPaを上回った。
3Dコンクリートプリンティング技術の際立った利点は、複雑な形状の外壁を造形できることだ。例えば、規則的あるいは不規則な曲面やうねりを持つ壁などである。
チームは3Dコンクリートプリンティング技術を用いて、2棟の住宅の試験施工に成功した。1棟目は幅5m、奥行き14m、高さ4m(リビング1室、ダイニングキッチン1室、寝室1室)。2棟目は幅8.5m、奥行き15m、高さ3.8m(寝室2室、ダイニングキッチン1室、リビング1室、書斎1室)で、壁はバラの花びらを模したデザインとなっており、厚さ200mmの壁は2層で構成され、各層の設計厚さは50mmである。

この技術の利点は、複雑な形状の外壁を造形できることだ。
住宅の3Dコンクリート印刷は屋外で行われたため、施工は天候条件に大きく左右され、例えばコンクリート壁の収縮やひび割れのリスクに影響した。
施工を通じてチームは、印刷を連続して行い、印刷終了直後にコンクリートへ十分な散水養生を施せば、コンクリート壁にはほとんどひび割れが生じないことを確認した。
逆に、印刷中にトラブルで印刷を中断しなければならない場合、約30~40分後にコンクリート壁に鉛直方向のひび割れが生じる。
防水性を比較すると、3Dプリントコンクリート壁は、片面をセメントモルタルで仕上げた焼成粘土れんが壁よりも優れている。コンクリート壁の透水係数は、焼成粘土れんが壁よりも大幅に低い。
ただし、焼成粘土れんが壁と同様に、3Dプリントコンクリート壁を透過する水は主に2層のコンクリートの接合部から浸入する。これは、2層の接合部が十分に緻密でなく、水が透過できるほどの欠陥や空隙が存在することを意味する。
ミエン准教授によると、建物における3Dプリントコンクリート壁の防水性を高めるには、2層のコンクリートの接合部の均質性を改善・向上させる対策が必要だと研究チームは考えている。
一方、コンクリート壁の圧縮強度は焼成粘土れんが壁より約30%高いため、3Dプリントコンクリート壁を単なる外皮構造ではなく、耐力壁として設計することも視野に入る。
実際、3Dコンクリートプリンティング技術を建設に応用すると、従来の工法に比べて工期の面で優位性がある(約80%短縮)ほか、同じ設計の建物の躯体を施工する場合、建設コストも約20%削減できる。 さらに、3Dコンクリートプリンティング技術は、従来の工法ではほぼ不可能な芸術的で複雑なデザインの建物を施工できるうえ、建設廃棄物を大幅に削減し、固体廃棄物(火力発電所の灰やスラグ、建設がれき、石膏など)を有効活用できる点が際立っている。 |

