ベトナムの研究者、植物の新種を世界に発表
6年前、研究チームが岩壁に生えるピンク色の花を咲かせる植物を見つけ、それが新種だと知って驚いた。
7月下旬、SCI(科学引用索引)に収録される権威ある植物学専門誌「Phytotaxa」は、ベトナム中部の旧クアンナム(Quảng Nam)省(現在はダナン市の一部)で見つかった植物の新種を発表した。
新種はフィラガティス・ファムホアンギイ(Phyllagathis phamhoangii V.T.Pham, T.C.Vu & Ranil、ベトナム名:Me nguồn Phạm Hoàng Hộ)で、ノボタン科フィラガティス(Phyllagathis)属に属する。植物に関する多くの著書を残した故ファム・ホアン・ホー(Phạm Hoàng Hộ)教授にちなんで命名された。根茎を持つ草本で、高さは約25cm。鮮やかなピンク色の花序が葉の上に伸び、クアンナムの湿った岩壁に生育する。

新種はクアンナムで見つかった。(写真:Phạm Văn Thế)
2011年3月、ベトナム科学技術アカデミー(Viện Hàn lâm Khoa học và Công nghệ Việt Nam)の研究チームはロシアとスリランカの研究者とともに、クアンビン(Quảng Bình、現在はクアンチ省の一部)からクアンナムにかけてのホーチミン道路沿いに残る原生林で、植物多様性の価値を評価する研究プロジェクトを実施した。
現地調査は2か月にわたった。チームはクアンビンを出発し、クアンチ(Quảng Trị)、トゥアティエン・フエ(Thừa Thiên Huế、現フエ市)を経て、最後の調査地点クアンナムに到着した。旧クアンナム省ダイホン(Đại Hồng)に残る原生林で、専門家らは調査ルートからわずか数十メートルの山腹の岩壁に生えるこの植物を発見した。
「ピンク色の花を咲かせ、塊状の根茎には硬い毛が多く生えている。かなり特異な植物で、私たちのほとんどは似た特徴を持つ種を見たことも聞いたこともなかった」と、研究チームのメンバー、ファム・ヴァン・テー(Phạm Văn Thế)氏は振り返る。
新種の可能性があると判断したチームは、記録と採集を入念に行った。テー氏は植物の各部位、特に生殖器官を詳しく分析・撮影し、大きさや色の情報も丁寧に記録した。
ハノイに戻ったチームは、ベトナムおよび中国、タイ、ラオスなど近隣諸国におけるこの属と科の情報を調べたが、採集した標本と一致する特徴を持つ種は見つからなかった。「それでも、世界の新種だという確信はまだなかった。標本を直接分析した私自身でさえ、自分の判断に自信が持てなかった」とテー氏は語る。

新種は鮮やかなピンク色の花を咲かせる。(写真:Phạm Văn Thế)
その後テー氏が過去の採集記録を見直したところ、2008年にクアンビンで採集された類似の標本が見つかった。この標本を探し出す作業は骨が折れ、長い時間を要した。テー氏はデータを何人かの同僚に送り、国際的な専門家にも発表について相談したが、ベトナムのノボタン科に関する資料が少ないことから、引き受けてもらえなかった。
データと標本はそろっていたものの、新種と確定するのは容易ではなく、メンバーはほとんど諦めかけていた。5年後になってようやく、テー氏はベトナムのノボタン科を研究している人物と連絡を取ることができ、その人物は「これまで知られていなかった種だ」と断言した。
スリランカの別の研究者も「世界中を探しても、これに似た種は見つからない」と述べた。
こうして研究者らは新種を発表するため専門誌への論文執筆を決めた。原稿は2017年初めに投稿され、6月末に受理、7月下旬に掲載された。

フィラガティス属の新種の、硬い毛が多く生えた塊状の根茎。(写真:Phạm Văn Thế)
新種が見つかった地域は特別利用林に含まれていないため伐採が頻繁に行われ、強い影響を受けている。そのため研究チームは、この種の保全と「危急種(VU)」への指定を提言している。
今回の発表により、世界とベトナムの植物相に新たな1種が加わった。今後、専門家は薬用植物としての可能性や観賞用としての増殖の可能性を検討でき、貴重な遺伝資源となる可能性もある。

