人類は気候変動から「逃れる」ために地下で暮らせるのか
気候危機が迫る中、地下での生活は現実的な解決策となり得るのだろうか。
欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスによると、2023年7月は観測史上最も暑い月となり、多くの記録が塗り替えられた。

クーバーペディの地下博物館。(写真:Getty)
焼けつくような暑さの中で、私たちはようやく、化石燃料の過剰な使用と温室効果ガスの排出が環境を変え、事態を悪化させてきたという深刻な結果を実感している。
科学者たちが気候変動に対処するための今後のシナリオを準備する中で、あるアイデアが提唱された。
それは、人類が地下などの別の生活環境への適応を検討すべき時が来たのかもしれない、というものだ。
熱を吸収・保持する大量の土や岩に囲まれた地下環境は、エネルギーを大量に消費する冷暖房に頼らなくても、地上よりはるかに安定した温度を保つことができる。
しかし、これは迫りくる気候危機に対処するための現実的な解決策なのだろうか。
解決すべき多くの課題
ほとんどの人は短期間であれば地下へ移り住むことをいとわないが、そこで永住するという考えははるかに受け入れがたいようだ。
「私たちはそこに属していない。生物学的にも生理学的にも、私たちの体は地下での生活に適するようにはできていない」と、地下世界をテーマにした本の著者ウィル・ハント(Will Hunt)氏は語る。

人類は地下都市で暮らせるのだろうか。(写真:Wikipedia)
実際、日光を浴びずに地下で長く暮らしすぎると概日リズムが乱れ、睡眠・覚醒のサイクルが最長30時間にまで延びることがある。
さらに、心身にさまざまな健康上の問題を引き起こす可能性もある。
地下生活のもう一つのリスクは、土砂崩れにつながる鉄砲水だ。気候変動によって極端な気象現象が増えると予想される中、これは特に懸念される問題である。
次に温度の問題がある。シカゴの商業地区ループで行われた研究では、駐車場や鉄道トンネル、地下室など熱を発するインフラが同地区に多く建設されたため、1950年代以降、地下の温度が大幅に上昇したことが分かった。
明らかに、地下の温度も地上で起きていることの影響を受けるため、地下を新たな避難場所に選んでも必ずしも安全とは限らない。
また、温度の上昇によって地盤が最大12mm膨張し、地下構造物に損傷を与える可能性があるとする研究もある。
模範的な地下都市をどう築くか

超高層ビルを逆さにしたデザイン「アーススクレイパー」の構想。(写真:Wikipedia)
超高層ビルは「スカイスクレイパー」と呼ばれる。しかし、これを逆さにして地中に埋めれば、「アーススクレイパー」という新しい概念が生まれる。
実はこうしたモデルは非常に古くから存在する。先史時代の人類は、地上に最初の小屋を建て始める前、地下数百メートルにも及ぶ洞窟で暮らしていた。
2017年に出版された著書『Civilizaciones bajo tierra(地下の文明)』の中で、著者のフアン・ホセ・レベンガ(Juan José Revenga)氏は、地下約20階層を持ち、数千人を収容できた地下都市デリンクユについて触れている。
フェロビアル(Ferrovial)社によると、これまで同様の構造物を誰も建設していないのは、それができないからではなく、現実的な需要がなかったからだという。
一方、2015年に発表された論文「熱エネルギー効率と持続可能な開発に向けた地下建設のレビュー」は、地下都市の効率性を高く評価している。
同論文によると、温室効果ガス排出の約40%を占める空調の影響だけを考慮しても、地下構造物はよりクリーンな都市づくりに役立つ可能性がある。地下生活にも一定の利点があるようだ。

地下都市RÉSOの一角。(写真:Wordpress)
科学者らによると、地下環境が人々に受け入れられるためには、安全性、自然光、良好な換気、そして地上の世界とのつながりを感じられることがすべてそろっている必要がある。
カナダ・モントリオールにある全長32kmの地下都市RÉSO(レゾ)は、ショッピングセンター、オフィス、ホテル、学校を備え、この理想を体現している。この地下複合施設は建物同士をつなぎ、人々が屋外の氷点下の寒さを避けられるようにしている。
公式統計によると、RÉSOの地下ネットワークには地下鉄駅10カ所、バスターミナル2カ所、オフィス1200件、店舗約2000軒、百貨店、住宅約1600戸、レストラン200軒、銀行40行、映画館、その他の娯楽施設がある。
2023年には気候変動により、イラン、パキスタン、インドの一部地域が人命を脅かすほどの暑さに見舞われた。
地球が「沸騰」し続ければ、数年後には人類は超高層ビルの代わりに地下都市の建設を真剣に検討するようになるかもしれない。
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