ベトナムの「四大国犬」とは? 希少な在来犬4種
ベトナムには「四大国犬」と呼ばれる4つの在来犬種がある。バクハー犬、ライ犬、モン・ボブテイル、そしてフーコック・リッジバックだ。
1. バクハー犬
「四大国犬」の一つであるバクハー犬は、ベトナム北西部の山岳地帯、ラオカイ(Lào Cai)省のバクハー(Bắc Hà)高原が原産地だ。この犬種は「ヴィテスピッツ(Vitespitz)」の名でも知られる。また、単に「むく犬」と呼ばれることもある。

バクハー犬は「ヴィテスピッツ」の名でも知られる。
むく毛のバクハー犬は、モン族の人々によって番犬や見張り、あるいは森への長期の狩猟の際の猟犬として使われてきた。
全体として、バクハー犬は中型犬で、引き締まった体つきと勇敢さを備えている。険しい山岳地帯でも素早く機敏に動き回り、非常に賢い。物音に敏感なため、猟犬や使役犬として選ばれることが多い。
他の多くの犬種と同様、純血のバクハー犬は体高よりも体長がやや長い。成犬の体高は50〜60cmで、性別によって異なり、雌は50〜55cm、雄は55〜60cmだ。体重は16〜26kgで、雌は16〜23kg、雄は19〜26kgとなっている。
この山岳犬種の外見で最も印象的なのは、長く厚い被毛だ。「むく犬」という呼び名はまさにこの特徴に由来する。中には、首周りの毛が厚く長く逆立ち、ライオンのたてがみのようになる個体もいる。このたてがみは頭部と胴体をはっきりと分けている。雄のたてがみは常に雌より長い。
ただし、たてがみを持つバクハー犬はそれほど多くない。この特徴は良質なバクハー犬であることを示す目安の一つとされ、当然ながら価格も安くはない。

地元の人々はこの犬を飼い、遠出の際に連れて行く。
むく毛のバクハー犬は、ベトナム北西部の険しい高山地帯で、何世代にもわたりモン族の人々と共に暮らしてきた。こうした過酷な環境が、この犬種の野性的な気質と並外れた生命力を育んだ。
地元の人々はこの犬を飼い、遠出の際に連れて行く。人々にとって彼らは親しい旅の仲間であり、身を守ってくれるボディーガードであり、数々の狩猟で成果を上げる頼もしい助っ人でもある。こうした密接な関係がこの犬種の野性を和らげ、地元の人々に忠実で親しみ深い動物へと変えていった。
2. ライ犬(インドシナ・ディンゴ)
ライ(Lài)犬(インドシナ・ディンゴとも呼ばれる)は、ベトナム原産の純血犬種だ。一部の書物によれば、インドシナ半島ではこの犬が存在した痕跡が6000年以上前にさかのぼるという。

この犬種は農家の家の番をするために飼われてきた。
インドシナ・ディンゴは、ベトナム北西部の中部丘陵地帯やラオカイ、そして国内の山岳地帯に最も多く見られる。農家の家の番や家畜の世話、森歩きのお供として飼われてきた。
モン族の暮らしにおいて、ライ犬は友であると同時に、大切な心の支えでもある。家に食べ物がないとき、ディンゴは森に入って獲物を狩り、それを飼い主のもとへ運んできた。こうしたことから、この犬種は古くから貴重な家畜とされ、ベトナムの「四大国犬」に数えられるようになったのだろう。
ライ犬は非常に賢く、機敏で、やや気性が荒い。飼い主に対してとても忠実で、周囲に潜む危険から常に全力で主人を守ろうとする。

ライ犬は非常に賢く、機敏で、やや気性が荒い。
かつてモン族は、ライ犬を本格的な猟犬として飼っていた。ライ犬は森に入り、ヤケイ(野鶏)や山のネズミ、リスなどさまざまな動物を捕まえて飼い主のもとへ持ち帰った。また「おとり」となって獣や毒ヘビを猟師の銃口の前へ追い込むこともできた。獲物を捕らえると、ライ犬は吠えて飼い主に知らせた。
当時のライ犬は「勇敢な狩人」のような存在で、モン族の暮らしに重要な役割を果たしていた。しかし現在では、この犬種は次第に退化し、狩猟本能もかつてほど強くなくなった。より人懐こく、従順になっている。
この犬種の野性的な気質は、適切に訓練すれば大きな力となる。道を覚えるのが非常に得意で、迷子になることはめったにない。家の番をする際には高い集中力を発揮し、反応も極めて速い。
3. モン・ボブテイル
近年、多くの人がハスキー、アラスカン・マラミュート、ピットブル、ゴールデン・レトリバーといった高価な輸入犬を競って買い求めているが、ベトナム自身にも非常に賢く美しく、多くの優れた資質を持つ犬種がいることを忘れがちだ。それがモン・ボブテイル(Chó H'Mông cộc đuôi)であり、ベトナムの貴重な「四大国犬」の一つである。

モン・ボブテイルはベトナム北西部の山岳地帯に点在して暮らしている。
モン・ボブテイルは、野生の犬と在来犬の交雑によって生まれた。ベトナム北西部の山岳地帯に点在して暮らしている。人の少ない辺境で暮らしてきたため、祖先である野生の犬の野性を今もそのまま保っている。
モン族の人々がこの地に移り住んだ際、彼らはこの犬を見つけて連れ帰り、主に狩猟や家畜の放牧、家の番を手伝わせる目的で飼いならした。
モン・ボブテイルは中型犬とされ、成犬の平均体高は約45〜55cm、体重は15〜25kgだ。通常、雄は雌よりも体高・体重がやや大きい。

病気になることはめったになく、かかっても軽症で自然に治ることが多い。
ベトナム北西部の手つかずの山岳地帯で生まれ育ったモン・ボブテイルは、優れた自然の抵抗力を持つ。病気になることはめったになく、かかっても軽症で自然に治ることが多い。また適応力も非常に高く、蒸し暑い夏の日から骨身にしみる冬の寒さまで、さまざまな気候条件にすぐに順応できる。
モン・ボブテイルは生まれたときから生来の知能と優れた記憶力を示し、訓練を素早く容易にこなす。最も際立っているのは抜群の方向感覚と道を覚える能力で、そのためモン族の人々が狩猟や採集で森に入る際には、常にモン・ボブテイルが同行してきた。
4. フーコック・リッジバック
フーコック・リッジバック(フーコックの「つむじ毛の犬」とも呼ばれる)は、ベトナムの希少な犬種だ。
フーコック犬はかなり古くから存在し、約400年前にベトナム南部のフーコック(Phú Quốc)島(旧キエンザン省、現アンザン省)に現れた。その起源については今も議論が絶えない。

フーコック犬はかなり古く、約400年前にフーコック島に現れた。
フーコック犬は、世界に3種しかいない希少なリッジバック犬種の一つだ(ほかはタイ・リッジバックとアフリカ南部のローデシアン・リッジバック)。背中に沿って走る逆毛の「リッジ」が最大の特徴だが、ほかにも純血のフーコック犬を見分けやすくするいくつかの特徴がある。
フーコック犬のリッジは小さな剣のような形をしており、個体によって長さ約35〜40cm、幅3〜5cmだ。剣先は尾の方を向き、柄の部分は肩の上にある。リッジの毛はかなり硬く、逆向きに生えて中央に寄り集まる傾向がある。色はほかの被毛より濃く、肉眼ではっきりと見て取れる。
フーコック犬のリッジにはさまざまな形がある。矢、木の葉、ギターなどだ。ただし、背骨を軸に左右対称で、幅が背中の幅を超えてはならない。フーコック犬には体のほかの部分にもつむじ毛があり、代表的なのは首と尻の両側だ。リッジの特徴は、本物のフーコック犬を選ぶうえで重要な要素となる。

フーコック犬は幼いころから飼い主に教わらなくても自力で泳ぐことができる。
フーコック犬の足は、指の間に薄い水かきがある点が特徴的だ。その構造はアヒルの水かきそっくりである。これがフーコック犬が泳ぎを非常に得意とする理由かもしれない。幼いころから飼い主に教わらなくても自力で泳ぐことができる。
フーコック犬の4本の脚はまっすぐで互いに平行だ。後肢の飛節は前肢の肘より低い位置にあり、獲物を追う際の加速に有利になっている。
フーコック犬は小柄で引き締まった体格をしている。成犬の体高と体重は、雌が約48〜52cm・12〜18kg、雄が50〜55cm・15〜20kgだ。タイ・リッジバックよりも小柄で、胴は長い長方形をしている。
腹部は深く引き締まっている一方、胸は広く厚みがある。成犬の胸の深さは前肢の肘まで達する。肋骨は丈夫で、互いに密に並んでいる。
フーコック犬は賢さに加え、優れた体力と鋭い感覚、狩りでの粘り強さを備えている。非常に足が速く、方向転換も機敏だ。高所を恐れず、木登りや跳躍、泳ぎも得意である。
フーコック犬はかなり気性が荒く、警戒心が強い。家族には友好的で親しみを見せるが、見知らぬ人に対しては決して心を許さない。人をかむこともあるがまれで、相手から危険を感じたときに限られる。
フーコック犬は極めて高い狩猟能力を持つ。家畜や家禽は格好の標的になりやすい。さらに、サンバー(スイロク)やイノシシといった大型の獲物を狩ることもできる。いったん標的を見つけると、獲物を壁際に追い詰め、飼い主の合図がない限り決して放さない。なお、サンバーなどの保護対象の野生動物を狩猟することはベトナムでは違法であり、刑事訴追の対象となり得る。
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