生物製剤でアクイラリアの木に沈香を生成、ベトナムの学生チーム
ベトナム林業大学(Đại học Lâm nghiệp)の学生グループが生物製剤を開発し、アクイラリア・クラスナ(Aquilaria crassna)の木に穴を開けて沈香を生成させた。
手作業や化学薬品による方法に代わり沈香の生成を促そうと、グエン・ホアン・アイン(Nguyễn Hoàng Anh)さん、グエン・アイン・ズン(Nguyễn Anh Dũng)さん、グエン・ドゥック・ナム(Nguyễn Đức Nam)さんの学生グループは、自然界から複数の菌株を選び出して生物製剤を作ることを目指した。
2020年7月から、グエン・ティ・ホン・ガム(Nguyễn Thị Hồng Gấm)博士の指導のもと、研究チームは沈香の生成を促す能力を持つ5つの菌株を選抜した。 Penicillium、Aspergillus、Trichoderma、Fusarium solani、Mucorである。これらは実験室で細胞外酵素のセルラーゼとペクチナーゼをよく生産する菌株だ。チームはこれらを分離し、沈香の生成を促す生物製剤の開発に成功した。
ベトナム北中部ハティン(Hà Tĩnh)省の旧フオンケー(Hương Khê)県にある沈香農園で8カ月間行った試験では、ドリル穴の100%で沈香の生成が確認され、生成部の大きさは2.2×36cmだった。生成された材は濃い黒色で、甘く澄んだ沈香特有の芳香を放っていた。

チームが実験室で配合した、沈香の生成を促す生物製剤。(写真:取材対象者提供)
現在、沈香を生成させる方法には手作業によるものと化学薬品を使うものがある。チームリーダーのグエン・ホアン・アインさんによると、手作業で自然に沈香を生成させる方法は簡単で実施しやすいが、成功率が低い。化学薬品を使えば効果は高く、短期間に多くの沈香を得られるが、有害な化学成分が残留してしまう。こうした沈香は消費者にも好まれない。そのため、沈香の生成を促す菌株を幹に直接接種する方法は有望と評価されており、成功率が高く、製品に有害な化学物質が残らないといった利点がある。
アインさんによれば、微生物は多種の酵素を合成し、アクイラリア・クラスナの木材細胞を構成する化合物を分解する。そのため、強固な木材細胞の構造が外側から内側へと徐々に分解されていく。この木には、損傷を受けた細胞の部分で化合物を合成するという性質がある。「幹に傷をつけ、その部分に生物製剤を注入することで、木の沈香生成がより効率的になります」とアインさんは話す。チームは研究成果を実際の生産に生かすため、生物製剤の製造技術を企業に移転する用意があるという。

チームが開発した生物製剤を用いた、ハティン省の沈香生成用のドリル穴。(写真:取材対象者提供)
ベトナム林業大学林業バイオテクノロジー研究所のグエン・ティ・ホン・ガム博士は、「チームの研究は非常に体系的で、すぐに応用できる」と評価する。 自然界に存在する菌株を分離・増殖させることで、沈香の生成をより効果的に促すことができる。ただし、生物的手法の欠点は、沈香の生成に長い時間がかかり、1本の木から得られる量も多くないことだ。
現在、沈香は主に天然のものと人工的に生成させたものの2種類に分けられる。人工沈香は人の手を加えることで形成される。通常、樹齢7~10年のアクイラリア・クラスナの木を選び、穴を開けて接種を行う。その後、木が沈香を生み出すまでにさらに約5年かかる。天然沈香と同様に、人工沈香も形成と蓄積の過程を経て生まれる。
ベトナムでは、アクイラリア・クラスナは北部から南部にかけての森林に点在して自生しており、旧コントゥム(Kon Tum)省(現クアンガイ省)、旧キエンザン(Kiên Giang)省(現アンザン省)、旧クアンナム(Quảng Nam)省(現ダナン市)、旧クアンビン(Quảng Bình)省(現クアンチ省)のほか、ダナン、ハティン、フーコック(Phú Quốc)島に集中している。ハティン省だけでも2020年までに約300万本が3,000haにわたって植えられ、平均密度は1haあたり1,000本、栽培する世帯は9,000戸を超える。

