恐竜マメンチサウルスの化石に哺乳類の歯形、恐竜を食べた最古の証拠
ドイツの科学者らが、恐竜マメンチサウルスの頸肋骨に残された歯の痕から、哺乳類が恐竜を「食べていた」ことを示す既知で最古の証拠を報告した。
2000年、中国とドイツの合同調査隊が、中国のジュンガル盆地南縁で、カメ、ワニ、恐竜、哺乳類など脊椎動物の化石を大量に発掘した。年代は約1億6000万年前、ジュラ紀後期にさかのぼる。
それから20年後、ドイツの科学者らはこの化石群の中から、恐竜マメンチサウルスの頸肋骨に残された歯の痕をもとに、哺乳類が恐竜を「食べていた」ことを示す既知で最古の証拠を報告した。

ジュンガル盆地の発掘地点。
ジュンガル盆地で発掘されたジュラ紀後期の化石群には、断片化した頸肋骨の化石が含まれており、科学者らは全長20メートルを超えるマメンチサウルスのものである可能性があると考えている。当初、研究者らはこの頸肋骨の化石に特別な点を見いだせなかったが、改めて調べ直したところ、骨の表面に小さく細長い痕があることに気づいた。痕の長さは約0.5~1.5mm、幅は約30~250μmだった。

マメンチサウルスは竜脚類の恐竜の一属で、体長の半分以上を占める長い首が際立った特徴だ。この属のほとんどの種は1億6000万~1億4500万年前、ジュラ紀後期のオックスフォーディアン期からチトニアン期に生息していた。最大の種は全長35mに達し、体重は50~75トンあった可能性がある。長い首はマメンチサウルスを見分ける特有の特徴で、その長さは体長の2分の1から3分の2に及ぶ。マメンチサウルスの首は19個の頸椎で構成され、最も長いものは2メートルを超える。椎骨同士は強固に結合していたため、首は柔軟ではなく、動きは遅くぎこちなかった。科学者らの推測によると、この恐竜の首の筋肉は比較的発達していたとみられ、そうでなければこれほど長い首を支えることはできなかったという。
骨に小さく細い痕が見つかったことを受け、研究者らはその原因として主に三つの可能性を想定した。一つ目は堆積物による摩擦や脊椎動物による踏みつけ、二つ目は昆虫による侵食、そして三つ目は脊椎動物の歯形である。そこで研究者らは、答えを探るため、頸肋骨の化石に残る痕を、同様の痕を持つ多数の化石標本と比較した。

生痕が残るマメンチサウルスの頸肋骨化石。a、b、cは異なる角度から撮影した写真。
堆積物の摩擦や脊椎動物の踏みつけは、骨の表面に細かな筋状の傷を残し、通常は平行な線の集まりとして現れる。長さはたいてい数百µm(マイクロメートル)未満で、幅はわずか数マイクロメートルだ。
しかし、頸肋骨の化石標本に残る痕は平行な線の集まりとして分布していないため、動物の踏みつけによる痕ではありえない。前述のとおり、化石の痕は長さ約0.5~1.5mm、幅約30~250μm(1mm=1000μm)で、堆積物の摩擦による傷よりはるかに大きい。

化石に残る痕は長さ約0.5~1.5mm、幅約30~250μm。
二つ目の可能性は、昆虫の侵食によってできた痕というものだ。これは化石記録ではかなり一般的な原因の一つで、残される痕もさまざまである。昆虫による痕の多くは、穴状や長い溝状をしている。こうした現象の主な「犯人」はシロアリだ。
これまでにも、恐竜の骨に残る多くの生痕が古代のシロアリの巣と関係しているのではないかと疑われてきた。シロアリが残す痕の特徴は、最も深い部分が中央にあり、両端がとがって中央が広いことで、さらに小さな噛み痕にはしばしば隆起が見られる。
ところが、頸肋骨の化石に残る生痕はしずく形で、一方の端がとがり、もう一方が丸く、最も深い部分は丸い端の近くにある。そのため、これらの痕は昆虫の侵食によるものではありえない。

昆虫の侵食によって化石に残された痕。
これらの可能性を除外したうえで詳しく分析した結果、研究者らは化石に残る痕の大きさや、歯の大きさ・形・種類をもとに、ついに対象を哺乳類のグループに絞り込んだ。
この地域の古代哺乳類の歯を比較した結果、科学者らは、マメンチサウルスの頸肋骨化石に残る比較的大きな歯形は、中国のシネレウテルス(Sineleutherus)によるものである可能性が高いと考えている。この動物の切歯の先端の幅は200μmで、頸肋骨化石の幅30~250μmの歯形と一致するためだ。

中国のシネレウテルスの切歯。歯の先端の幅は200μm。

シネレウテルスはリスやハツカネズミに似た姿をしていた。
シネレウテルスはジュラ紀中期から後期に生息し、リスやハツカネズミに似た姿をしていた。この動物については現在も多くの議論があり、哺乳類だとする見方がある一方、哺乳類から分かれた側枝にすぎないとする見方もある。
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