カエル・ヘビ・ミミズの合いの子? ベトナムの奇妙な両生類アシナシイモリ
この奇妙な「ミミズガエル」はヘビにそっくりな姿をしており、初めて目にした人の多くを驚かせる。
カエルと聞けば、多くの人はなめらかで湿った皮膚、長く力強い後ろ脚、見事な跳躍力を持つ両生類を思い浮かべるだろう。しかし「カエル」と呼ばれながら、カエルよりもヘビに近い奇妙な姿をした生き物がおり、初めて出くわした人の多くをひどく怖がらせている。
ヘビのような姿の「カエル」
ここで取り上げるのは、ベトナム語で「エックズン」(ミミズガエル)と呼ばれるアシナシイモリの仲間で、ヌメアシナシイモリ科(Ichthyophiidae)に属する。この仲間には多くの種があり、その多くが個体数の減少により絶滅の危機にひんしている。
10人が出くわせば、7人はミミズ、3人はヘビだと言うだろう。だが実際には、この生き物は両生類で、カエルの…親戚なのだ。
この両生類は、北部のタイグエン(Thái Nguyên)省から南端のカマウ(Cà Mau)省まで、ベトナム各地の森林や山地に分布している。
アシナシイモリ類は、ベトナムで唯一の脚のない両生類だ。細長い体に四肢はなく、つやのある滑らかな皮膚には多数の横じわがある。その姿はヘビにそっくりで、初めて見た人の多くを怖がらせる。
移動の仕方もヘビと同じで、体をくねらせて前に進む。この体形は地中や腐った落ち葉の下での生活に適応したもので、土の隙間やトンネルを楽にすり抜けることができる。
以下はその写真の一部だ。

アシナシイモリの体はミミズに似ているが、ずっと大きい。(写真:Phùng Mỹ Trung)。

さらに、爬虫類のような体に黄褐色のつややかな縦じまが走り、平たい頭をくねらせる姿は、派手な体色の毒ヘビを連想させる。(写真:War/Nguyễn Vũ Khôi)

体長は数十cmに達することもある。(写真:pskhun)

ミミズとの違いは、頭に黒い点のような目が2つあることだ。(写真:Maxim Ryzhov)

頭は小さくやや平たく、吻は比較的とがっており、はっきりしたあごがある。(写真:biozcw)

幼生期には首の両側にえらがある。成長するとえらは消え、別の方法で呼吸するようになる。

標高の高い場所、たとえばベトナム北部のタムダオ(Tam Đảo)山地などに多く生息するが、メコンデルタのウーミン(U Minh)の森のような低地でも見つかっている。(写真:Maxim Ryzhov)

ミミズのように土の中に潜って暮らし、巣穴は池や湖の近くの、深さ約20~30cmの柔らかい土の中でよく見つかる。(写真:eol.org)

ミミズや一部の昆虫を食べる。(写真:thetexanherper.com)

多くの場所で生息地が失われたため、現在の個体数はかなり少ない。(写真:Nikolai Orlov)

卵は水辺の近くに産む。1回の産卵数は約20個で、卵は粘液でつながっている。雌は卵に体を巻きつけて乾燥から守ると同時に適温を保ち、子が最もよく育つようにする。(写真:thetexanherper.com)

このユニークな両生類はベトナムのレッドデータブックに掲載され、法律で保護されている。(写真:Pskhun)
アシナシイモリは頭と胴の境目がはっきりしない。目と口はとても小さく、見つけにくい。顔の前方、目の近くには短い触手が2本あり、周囲の環境を感じ取ったり餌を探したりするのに役立つ。
餌はミミズ、昆虫の幼虫、イモムシ、クモなどだ。そのため、生息環境で昆虫の数を抑え、生態系のバランスを保つ重要な役割を担っている。
アシナシイモリ――両生類界の献身的な母親
カエルやヒキガエルなど、ほかの両生類の多くは産卵後すぐに卵を放置するが、アシナシイモリの母親は卵を丁寧に世話する。
繁殖期になると、雌は水辺に近い湿度の高い場所を探して産卵する。産卵後は卵に体を巻きつけて守り、粘液を分泌して卵の乾燥を防ぐ。また、できるだけ多くの卵がふ化するよう、温度と湿度も調節する。
アシナシイモリに毒はあるのか
口は小さいが、中には獲物を捕らえるための歯が並ぶ上下のあごがある。
当初、科学者たちはアシナシイモリには毒がないと考えていた。しかし最近の研究で、口の中に毒腺があり、かみついた際に毒を分泌できる可能性があることがわかった。

口が小さいため、人をかんだり襲ったりすることはほぼできない(写真:Flickr)。
とはいえ、その毒が人にどのような影響を与えるのかは、現時点でもまだよくわかっていない。また口が小さいため、人にかみついて毒を注入するのは非常に難しい。
アシナシイモリ――ベトナムで法的に保護される動物
東南アジアでは11種のアシナシイモリが記録されており、そのうちベトナムには4種が生息し、3種が固有種だ。ベトナムで見つかっている種は以下の通り。
イクチオフィス・カトロケンシス(学名:Ichthyophis catlocensis):2015年に、ベトナム南部のカッティエン(Cát Tiên)国立公園のカトロク(Cát Lộc)地区(ラムドン〈Lâm Đồng〉省の旧カッティエン県とバオロク〈Bảo Lộc〉にまたがる)で初めて見つかった。

ラムドン省のカッティエン国立公園で撮影されたイクチオフィス・カトロケンシスの個体(写真:E.A. Galoyan)。
ほかの種とは異なり、体側に沿って走る黄色いしまがない。小型の種で、成体でも体長は約20cmにすぎない。
非常にまれな種で、繁殖行動や生息環境、食性などの生態はまだ記録されていない。
イクチオフィス・カロエンシス(学名:Ichthyophis chaloensis):全身が青みがかった黒色で、ほかの種に見られる体側の黄色いしまはない。成体の体長は約22cm。

ベトナム中部の旧クアンビン(Quảng Bình)省(現クアンチ省)のフォンニャ・ケバン(Phong Nha - Kẻ Bàng)国立公園で撮影されたイクチオフィス・カロエンシスの個体(写真:Nguyễn Quảng Trường)。
2015年に旧クアンビン省のフォンニャ・ケバン国立公園で初めて発見された。現在は旧ミンホア(Minh Hóa)県旧ホアソン(Hóa Sơn)村のチャロー(Cha Lo)集落の標高600m以上の場所でのみ記録されている。
イクチオフィス・カトロケンシスと同様に非常にまれで、その生態はまだ十分に記録されていない。
イクチオフィス・グエノルム(学名:Ichthyophis nguyenorum):2012年にベトナム中部のコントゥム(Kon Tum)高原で発見された。名前はベトナムの爬虫両生類学者2人、グエン・クアン・チュオン(Nguyễn Quảng Trường)氏とグエン・ティエン・タオ(Nguyễn Thiên Tạo)氏に敬意を表して付けられた。

体に沿って走る2本の黄色いしまが目立つイクチオフィス・グエノルムの個体(写真:Chris Joldnall)。
ベトナム固有種で、中部高原(タイグエン)と南部のラムドン、ザライ(Gia Lai)、ドンナイ(Đồng Nai)の各省と旧コントゥム省、旧ビンフオック(Bình Phước)省で見つかっている。
背中は紫がかった黒色で腹側は淡く、両体側には上あごの中ほどから尾の先端近くまで途切れない黄色いしまが走る。成体は体長30cmに達することがある。
大雨の際によく目撃される。普段は林冠の下の湿った場所や渓流沿いのぬかるみに暮らし、コーヒー農園や水田、住宅地で見つかることもある。
イクチオフィス・コータオエンシス(学名:Ichthyophis kohtaoensis):目から尾の先端まで均一な2本の黄色いしまが走り、背中は褐色、腹側は明るい褐色。成体の体長は約40cm。
名前は、1960年に初めて見つかったタイのタオ島(Koh Tao)にちなむ。タイのほか、中国南部、ベトナム、ラオス、カンボジアに広く分布する。
ベトナムでは、フート(Phú Thọ)、旧ティエンザン(Tiền Giang)、アンザン(An Giang)、カマウなどの各省で見つかっているが、その数はごくわずかだ。

イクチオフィス・コータオエンシスはイクチオフィス・グエノルムによく似ているが、より大きい(写真:iNaturalist)。
林冠の下の湿った場所や、コーヒー農園、水田、森に近い住宅地で見つかる。雨季に活発になり、大雨の後によく見つかる。
ベトナムのアシナシイモリ類は現在、森林の縮小や土壌の侵食に加え、長引く洪水で土中で窒息死するなど、生息地の喪失と餌不足に直面している。アシナシイモリ類はベトナムのレッドデータブックに掲載されており、保護と捕獲禁止が求められている。
この記事を通じて、読者がアシナシイモリとヘビをしっかり見分け、数が減りつつあるこの希少な動物を誤って殺してしまわないことを願う。
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