海藻――人類の未来を支える、不思議だが極めて有用な「宝物」
世界のほぼすべての海に生える海藻は、多くの沿岸地域でなじみ深い存在であるだけでなく、気候変動との闘いで極めて大きな役割を果たす可能性がある。
次第に明らかになる宝物
世界の多くの沿岸地域と同様に、英国で海を生業とする人々は何十年にもわたって海藻を採取し、食べてきた。ウェールズでは、名物の「ラーバーブレッド」がラーバー(laver)と呼ばれる海藻から作られる。この料理は非常に大切にされており、原産地名称保護の対象となっている。
海藻の用途は食卓だけにとどまらない。現在では化粧品や家畜飼料から園芸用品、包装材に至るまで、あらゆるものに使われている。
環境、食料安全保障、気候変動への懸念が高まる中、色や形がさまざまで、しかも丸ごと食べられるみずみずしい宝物である海藻は、地球の持続可能な未来において重要な役割を担うとみられる。英国はその重要性を認識し、行動を起こそうとしている。

今年4月、「英国初の海藻産業専門施設」とされるプロジェクトが正式に始動した。専門家らは、世界中で広く行われながら十分な投資がされてこなかった分野の商業化に弾みがつくことを期待している。
シーウィード・アカデミー(Seaweed Academy)は英国政府から50万ドル近い資金を受け、「英国における海藻養殖の発展」を促すための研究に着手した。プロジェクトはまず「高付加価値市場」に焦点を当て、研究成果を生かして英国産海藻製品の国際競争力を高める方針だ。
ただし、多くの人の想像とは異なり、海藻産業は他の工業化された農業とは「まったく違う」姿になるという。海に潜って海藻を収穫したり栽培を補助したりする巨大な機械はない。外から見えるのは海面に浮かぶブイだけで、その下には巨大な海藻の塊が付いた長いロープが垂れている。収穫も「手作業」が中心となる。
それでも、養殖場の許可取得から自然災害や暴風雨まで、海藻養殖を脅かす課題は数多い。海藻生産を産業規模に引き上げる最適なモデルを研究で見いだすには、数年を要するとみられる。
海藻産業の理想的なモデルを求めて
英国の海藻養殖・採取への関心は、今のところ伝統的な営みには影響を与えていない。イングランド南西端に位置する風光明媚なコーンウォール州では、コーニッシュ・シーウィード社(Cornish Seaweed Company)が2012年以来の事業を続けており、この産業が今後どのように発展しうるかを垣間見せている。
同社の共同創業者で最高経営責任者(CEO)のティム・ファン・ベルケル(Tim van Berkel)氏によると、同社は海岸で天然の海藻を採取して食品にしている。2017年には、コーンウォールの漁村ポーサロウ(Porthallow)沖のムール貝養殖場で、胞子から海藻を育てる取り組みも始めた。
「海藻は水中につるしたロープに沿って成長します。この方法での海藻養殖はムール貝の養殖に似ています。この海域では現在2種類の海藻を育てています。さらに、国内各地の海で6種類の天然海藻を一年中採取しています」とファン・ベルケル氏は語る。

英国の沿岸各地では、ほかにも多くの企業がこの分野で存在感を示そうとしている。収量を高めるため、それぞれの海域に自生する種類の海藻の養殖にも力を入れている。
2020年、国連食糧農業機関(FAO)の報告書は、海藻養殖を「東アジアと東南アジアの国々が支配している」分野と表現した。これは大きなビジネスであり、2019年には海藻そのものの価値だけで147億ドルを生み出した。
中国やインドネシアの巨大な海藻養殖場は、この産業が大規模に発展していることを示している。アジアだけでなく米国でも、ニューイングランドからアラスカ、太平洋岸北西部まで、多くの地域に大規模な養殖場が生まれている。
しかし、経済的価値がすべてではない。米国海洋大気庁(NOAA)の科学者らは「海藻はCO2を吸収し、それを使って成長する。窒素やリンも吸収する」と強調している。
世界全体では、この産業は過去20年間で急速に成長した。世界の海藻生産量は2000年の1060万トンから2018年には3240万トンに増加した。一方で、養殖された海藻が過剰に繁殖して周辺環境に侵入したり、養殖場が環境に影響を与えたりするといった問題もある。
それでも、もたらされる利益と比べれば、各国は引き続き開発に積極的に投資しており、持続可能な産業を築くため、最大の効果を生む計画の在り方を模索している。
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