ベトナム・タインホア省で先史時代の巨大類人猿の歯を発見
科学者らが巨大類人猿の歯の標本2点を発見した。ベトナムの更新世から見つかった唯一の標本だという。
研究は、ロシア科学アカデミー古生物学研究所とベトナム・ロシア熱帯センター(Trung tâm Nhiệt đới Việt - Nga)の専門家であるレ・スアン・ダック(Lê Xuân Đắc)博士、E.N.マシチェンコ(E.N. Mashchenko)博士らの研究チームが行った。
研究チームは2020年から2022年にかけて、ベトナム北中部タインホア(Thanh Hóa)省の旧バートゥオック(Bá Thước)県旧カインナン(Cành Nàng)町にあるランチャン(Làng Tráng)洞窟で調査を実施した。収集した古生物遺物を分析した結果、巨大類人猿ギガントピテクス・ブラッキー(Gigantopithecus blacki)の歯2点を確認した。これはベトナムの更新世から見つかった唯一の標本で、この絶滅種の歯としては記録上最も新しいものの一つ(約12万5000年前)だという。

ランチャン洞窟で見つかった巨大類人猿の下顎の臼歯。(写真: ロシア科学アカデミー)
ベトナム・ロシア熱帯センターの発表によると、研究チームはランチャン洞窟で見つかった歯の形態的特徴と歯冠の大きさを分析し、巨大類人猿G. blacki の歯と一致すること、さらにエナメル質の厚さや歯根の大きさ・形状にも類似性があることを確認した。エナメル質の表面には微細な引っかき傷や小さなくぼみがあり、これは霊長類の歯に特有の特徴だという。
G. blackiはオランウータンに近縁で、霊長類の中で最も大きく、体重は200~300kgに達した。巨大類人猿は東南アジアの森林を歩き回っていたが、数十万年前に絶滅した。ただし、その化石は非常に珍しく、見つけるのは難しい。これまでに知られている巨大類人猿の遺物は、中国南部の石灰岩洞窟の更新世の堆積層から採集された歯の破片や顎の骨だった。ベトナム北部やタイ北部でも、単独の歯が見つかっている。また、インドネシアのジャワ島では地質年代が不明な巨大なサルの下顎骨の破片がいくつか見つかっており、大きさがG. blackiに相当することからGigantopithecus sp. とされている。
研究チームはGigantopithecusの地理的・層序的な分布を分析し、ランチャン洞窟で見つかった遺物は、これまでに知られている巨大類人猿の記録の中で最も新しいものの一つだとみている。

巨大類人猿の姿を再現したイラスト。(写真: 画家Z・ブリアン)
ランチャン洞窟での研究では、さまざまな分類群に属する41種も特定され、当時の古環境に関する仮説も示された。ランチャン動物相で初めて確認された種には、巨大類人猿(Gigantopithecus blacki)、カニクイザル(Macaca cf. fascicularis)、アカゲザル(M. cf. mulatta)、ウンピョウ(Neofelis nebulosa)、トガリネズミの一種コドシゴア・ホフマンニ(Chodsigoa hoffmanni)、コウモリの一種イア・イオ(Ia io)、レオポルダミス・ネイリ(Leopoldamys neilli)、クマネズミ(Rattus rattus)、インドサイ(Rhinoceros unicornis)、ヒゲイノシシ(Sus barbatus)、マメジカの一種トラグルス・カンチル(Tragulus kanchil)、キバノロ(Hydropotes inermis)、ホッグジカ(Axis porcinus)のほか、ワニ、カメ、数種の陸生巻き貝が含まれる。
ベトナムでは2000年代以前から、複数の古生物調査団がランチャン洞窟とその周辺を調査してきた。ランチャン石灰岩洞窟は、先史時代の人類の化石や、ステゴドン・アイルロポダ動物群に属する30種以上の動物の化石が見つかったことで知られる古生物遺跡だ。これらは中期~後期更新世の後半を特徴づける動物である。ランチャン洞窟の更新世動物相に関する研究成果は、古生物と現生動物の生態的適応や分布の動態、過去の動物相と古環境の変化を明らかにしてきた。古生物に関する新たなデータは、現代のベトナムの動物相における生物多様性の動向を分析・予測するための科学的根拠となる。
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人類と火が先史時代の動物を追いやった。約1万3000年前のカリフォルニアで起きたことは、現代の状況とよく似ている。
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